kiritterのブログ

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良くも悪くも強烈なインド - 書籍紹介 - インドの本と10年後に食える食えないの本

今回は、3冊併せてのご紹介。

 

インドの本と言われて最初に念頭に浮かぶのは、紀行系の本。
著者の有名無名に関わらず、インド紀行本は多い。
類するものとして、ビジネスマンによる現地滞在記。
そういう本も、ざっと立ち読みしたが、今回は、インドとはどういう国なのかマクロな視点で知りたい、だったので、次の本を購入。

 

『インド - 目覚めた経済大国』(日経ビジネス人文庫)(日本経済新聞出版社、2007/05)

インド―目覚めた経済大国 (日経ビジネス人文庫)

インド―目覚めた経済大国 (日経ビジネス人文庫)

 

『本当はどうなの? これからのインド』(中経の文庫)(白水和憲、中経出版、2009/05)

本当はどうなの? これからのインド (中経の文庫)

本当はどうなの? これからのインド (中経の文庫)

 

ひとまず、いきなり詳細な本に手を出すのはやめて、文庫で抑えた。
結果として、目的達成には十分だったと思う。
ちょうど、リーマンショック前後の発行の2冊があったので、両方購入。
前者は、小さめの字でみっしり詰まっていて、内容はかなり充実していると思う。
後者も買ったが、リーマンショックもなんのその、成長は続伸中で、大枠の急激な変化は無さそうなので、1冊だけなら前者が良いと思う。

 

インドのことを全然知らなかった。
本書によって、インドのことがある程度イメージできるようになったとともに、光の影の両面から強いショックを受けた。

人間というもの、無意識に、自分のおかれた環境をそのまま拡張することで、世界を類推してしまうものだと思う。例えば、受験戦争!という言葉を聞きながらも、自分のクラスを眺めて周囲が特に切羽詰った感のないとき、そのことが全然実感できないように。
というわけで、別のクラス、別の学校を知ることは非常に有益だ。

光の面で言えば、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた頃、イギリス人から見た日本はこういう感じだったのかなと思った。

 

中国についても同じことが言われるけど、まずは人口の桁が違う。
富裕層にしろ、エリート層にしろ、何らかの層が例えば人口の1割と考えると、それがいきなり1億人というオーダーになる。
つまり、市場のでかさが違う。
携帯電話加入者数は、昨年(2011)前半で、8億人を突破したらしい。
モノスゴイ数字だ!

 

後者の本では、中国の南下政策に対抗する構想として、「環インド洋圏」という言葉が出てきた。西に湾岸諸国とアフリカ東海岸、東にアセアンとオーストラリア、その中心にインドが座すという壮大な世界観。日本は、そんな一大経済文化圏の蚊帳の外だ・・・。

非常につらいことだが、昨年の3.11により、東京がアジアの中心地になるという夢は完全に絶たれてしまった、そんなことを思ってしまう。
地震のリスクと原発問題が海外に広く認知されてしまったことで、わざわざ東京を中心拠点として位置づけるに値するメリットが無いと思うことから。
観光立国を目指していた戦略にも大きなマイナス要因。
そうなると、日本は本当に極東の一島国になってしまう。
(とはいえ、仮にそうなるとしても、それはそれで良い面が全く無いとは思わないが)

 

とはいえ、インドも良いことばかりではなく、非常に大きな爆弾も抱えている。
それは、ヒンドゥーとイスラムの宗教対立である。
後者の本では、近年、爆弾テロは、インド全土に拡大していて、無差別性を帯びている感ありと。命に関わるカントリーリスクだ。
以前は、隣国パキスタンからの越境テロだったものが、近年では、最貧困層にあたる、国内のイスラム教徒の人口増に伴い(貧困層ほど出生率は高い)、彼らによるテロが増加しているらしい。

そのためにもインドでは、「全体の底上げ」が近年の成長テーマであり(2004年の政権交代の要因となった)、雇用の確保が最重要課題として挙げられている。
その一環で、製造業の誘致に全力を上げているとのこと。
日本企業の工場進出もあるわけで、それはつまり巡りめぐって、日本の雇用が失われることを意味する。

 

今回の本にはあまり生々しい影の面は書かれていないが、ともかくそれらを知った後で、今、日本という国にいることを思うと、ただそれだけで幸せを感じるほどだが、同時に、インドの輝く光の面にも戦慄を覚え、これから日本はうまいことやっていけるだろうかと、違う不安も覚えた。

 

 

もう1冊の本は、以下。

『10年後に食える仕事、食えない仕事』 (渡邉正裕東洋経済新報社、2012)

10年後に食える仕事、食えない仕事

10年後に食える仕事、食えない仕事

 

著者は、「現場を重視した生のニュースをタブーなく追求・配信」するMyNewsJapanの代表兼編集者の方。

 

本書には、インドと中国の名がたくさん出てくる。
こういう文脈で両国の名を目にすることは日常茶飯事的にあるが、
つまり、はいはいその話ね、と記号的に処理しがちになるが、
そのときに、まさに上述のインド本で読んだ内容が生々しく脳裏に浮かび、
これまでになくリアルな話として伝わってきた次第。

 

ちなみに、「半導体は産業のコメ」という言葉が出てくる。
そういえば確かにこの言葉、小学校で社会の教科書に載っていたかも、と思い出した。
それが今や瀕死の状態だ・・・。
何ということだろう、この時代の移り変わりの早さは。

その昔、繊維産業が主産業だったと教科書で習ったときは、
「繊維だなんて!」と思ったものだが、
「半導体だなんて!」とは思わなかったわけで、
そうなると、今まさに花形産業な業界も、いずれはそう言われる日が来るということ。
そのことを踏まえて10年20年を考えないと。

昨今のニュースで伝え聞くテレビの状況も非常に厳しい。
クルマも、電気型が一人立ちしたときにパラダイムシフトが起こりそうだ。

 

 

光も影も両極端な国、インド。
ともかく、カンブリア爆発のような猛烈な勢いを感じたのだった。

※インドの勢いに押されたようで、悲観的な雰囲気が漂っているかもしれない・・・。
  ときにはそういうのも必要だと思うことにする。