kiritterのブログ

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「今」に至る文脈 - 書籍紹介 - 世界と日本のまちがい

載せる本の幅を広げるため、過去読んで印象に残っている本も織り交ぜようと思った。

自分がいつもググって本を見つけて買っているように、誰かの本の出会いに貢献できるかもしれないというのが、このブログのひとつの目的なので、内容について今きちんと語れるかどうかはともかくで、自分がこれいいと思った本は載せていきたい。(自分の考えて無さが露呈して情けない話にはなるが)

 

『誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義』
松岡正剛、春秋社、2007)

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義

 

私は、この非常に興味深い日本というものがどうやって生まれてきたのかというただその一点から、古代史に関心を抱き、折に触れて読むのだが、本書に出会ったことで、近現代史にも注意が向くようになった。
まさに「今」に至っている直近の大きな文脈なのだと。

 

本書の読書中、大きく2回、ドキリとする文章に出会い、それによって本書の存在が記憶に刻まれたので、そこだけをピンポイントでご紹介したい。

 

博覧強記で知られる著者の、縦横無尽の解説による欧米アジア各国の近代動向の話に浸っているさなか、本書の半分にさしかかろうかというところで、著者は突然こちらにボールを投げてくる。

それにしても、明治日本はこのような近代化の方法しかとれなかったんでしょうか。アヘン戦争に見舞われた清国の轍を踏まないためには、この方法しかなかったんでしょうか。それとも、列強と一戦を交える能力もなく、その気もなかった日本にしては、けっこう上出来の維新革命をしたんだとみるべきなんでしょうか。

この判断は、今日の歴史家たちにもなかなか結論しがたい問題のようです。みなさんは、どう見ますか。明治の近代化政策って、成功なんですか、失敗なんですか。まあまあなんですか。何かが足りなかったとすれば、それはどういうものですか。

「成功なんですか、失敗なんですか。まあまあなんですか。」

「えっ・・・」

欧米の歴史教育では歴史上の登場人物なり立場なりに立って討論するような授業もあるのかもしれないが、今の日本の歴史教育がどういうものなのかも知らないが、とりあえず、自分の受けた歴史教育は、暗記の授業だった。

歴史とは、人類の試行錯誤の壮大な記録だ。何をしたときにどういうことが起きたのか、そのノウハウの蓄積だ。覚える科目ではなく、そこから吸収する科目だったのだ。
そういうことに、子どもの頃に気づきたかったなあ・・・(自分の愚かさに文句を言うしかない。。)

とりあえず、列強の植民地にならなかったことは良かった、とはいえ急激な欧化によって、廃仏毀釈とかそれまでの日本の文化を壊したり、断絶ができたようなことは良くなかった、そんな断片的なことしか言えない。

 

ここでの衝撃はそのまま次の話につづく。

話はどんどん進み、第一次・第二次中東戦争へ。
そして、著者はこう言う。

さあ、ここからさき、中東がどうなっていったかというのは、もう現在の世界史です。

実際は「現在の世界史」部分に傍点が振られている。

今の私が何か書くより、このページに書き込まれている自分のメモの方が、そのときの気持ちをうまく言い表している。そのまま引用。

この言葉の緊張感。
どこか絵空事だと受け止めていた歴史が、
まさに自分の今と地続きであることに、はっと気づく言葉。
そして、「いろいろあったけどめでたしめでたし」で今の世の中があるわけじゃなく、
今まさに不安定な社会に生きていることに気づく。

 

しかし、これだけの大小の膨大な出来事を編集して、ひとつの文脈として見せてくれる、著者のチカラにはただ脱帽するばかり。
私の方もそれを有難くきちんと受け止めて役立たせないと。
(大枠を結構な割合で忘れていることに気づいて泣きそうになる!
 道具として使わない知識はすぐに忘却の彼方に消え去る!)