1点、個別事項に踏み込んで追記。
『Software Design 2012年2月号』(技術評論社、2012)
Software Design (ソフトウェア デザイン) 2012年 02月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2012/01/18
- メディア: 雑誌
- 購入: 1人 クリック: 68回
- この商品を含むブログを見る
第1特集 IT市場の転換期を生き抜く
第3章の日本HPの北山氏の言葉。
10年の常駐が終わったとき、
チームではアプリの開発ができる若手から引き取り手が見つかって、
私は最後まで残りました(笑)。
この一文からいろいろな出来事が脳裏に浮かんでくる。
ここだけピンポイントで取り出しても全体像は見えないものだけど、それでもともかく、これを機に、SI事業のひとつの側面について、いくつか思うことを書き残しておきたい。
(一口にSIといってもいろいろカタチがあるので、自分の見聞きの範囲。
なので、単に、あるひとつの話という位置づけ)
SI企業に限らず、企業なるもの、安定した収入源というのは重要な話。
なので、SI企業からすると、例えば、
期間3ヶ月の案件を都度探して、人をやりくりしながら、1年に4回やるよりも、
期間1年でまとまった人数で1回やる方が望ましい。管理効率も良い。
そこでひとつの方向性として、顧客先への常駐というものが挙がってくる。
これにより、メンバーの予定が比較的長期で見込めて、「遊ぶ」状態になるリスクを抑えられる。
また、実際の現場の面からも、やはり顧客の現場にいてこそ分かることがたくさんあって、シゴトが捗るという事情もある。捗る以前に、よっぽど業務に通じていない限り、それしかないかもしれない。
ここにひとつの大きなジレンマがあると思っている。それにどう対処するかが、企業と社員の命運を握る、ひとつの要因になるのかもしれない。
常駐する個人にフォーカスしてみると、往々にして、その現場に最適化してしまうというリスクがある。業務内容、シゴトの進め方、扱う手法や技術、等々。
2年なら全然良いだろうけど、5年10年となると・・・という印象あり。
比較的安定した環境下で、余裕が持てて、意識的に最適化せず研鑽を積む、ということであれば、個人としてはかなり望ましい状況だと思うけど、なかなかそんなにうまくはいかない。
この最適化リスクが顕在した実例を近年見た。諸事情はあったが、結果として、うまくいかなかった。そういうリスクがあると思っていたことが現実に示された経験となった。
とはいえ前述通り、企業側からすると長期契約が望ましい。合理的な選択なのだ。
それにどう対処するかは、企業と当人次第。
次に、人が分散する話。
例えば、その企業の開発者が100人だとして、100人全員がひとつの場所に常駐する、そんな話は無くて、例えば、10人のチームが10箇所へ常駐、そんなイメージとなる。
チームのマネージャークラスであれば、1ヶ月に複数回は帰社して、ということもあるだろうけど、往々にして、メンバークラスは、諸事情につき、1ヶ月に1回の帰社ができなかったり、しなかったりする。全員が一堂に会する機会なんて、そうそう無い。その機会が、シゴトではなく、単なる飲み会だったりもする。そもそも「全員」が集まるなんてことはまず無いように思う。
このとき、そもそも論に立ち戻ってみて、素朴な疑問として浮かぶのが、その会社の存在意義は何か?という点。
その会社は、ひとつの存在として、一体何を成しているのか。
婉曲せず率直に表現すると、バラバラなチームなり個人なりをグループ化しているだけではないか、そんな風に思えてしまう。
いや実は、10人チームが10箇所で継続している環境というのは、相対的に望ましい状況だと思う。各チーム内で、各種を共有・向上させる機会を持ちえるという観点で。そして、チーム間でそれらが連携できればさらに望ましい。でも実際はなかなかそんなにうまくはいかない。だから、グループ化のイメージが想起されてしまう。
最後にもうひとつ。
冒頭の引用文にあるように、常駐はいつか終わる日が来る。
現場のキーマンとなって、そこに転職して要職に着いたという人もいたけど、いろいろ条件が揃って初めて可能になる話だと思う。
ともかく、大抵の人にとって、常駐は終わるものだ。
あまり生々しくは書かないけど、ともかく結果として、終わってそこからまた新しく始める、そういう流れになる。
シームレスに次につながれば全然良いと思う。
ここで問題になるのが、一つ目の、最適化リスクの話。
具体的なイメージを醸し出すために、例えば、28歳から10年間常駐して、38歳で常駐が終了したと想像してみる。シームレスに、38歳で求められる価値を出せれば良いけど、どうだろうか。近年は案件も溢れているわけじゃないので、自分にぴったりの案件を、というのも易しい話ではないかもしれない。
きちんと汎用化されていて、ああ、この人ならきっとうまくやり遂げそうだ、そう思わせてくれる人もいるので、行き止まりの道というわけでは全然ない。ただし、自分も開発に携わらないといけない小規模案件や、実装レベルの話もできなくては回せない案件などには参画が難しいという面はある。とはいえ、人がいないのでやってもらうしかない、という流れになって、大失敗したケースを近くで見たことがある。
つらつらと書き連ねてきた。
実際は悪い話ばかりじゃないと思うけど、とりあえず、ここではパッと見、よろしくない話ばかりになった。(それに、もろもろにつき、だからオレは、という話は何も書いてないし。。)
でも、こういう話は、いずれ過去の話になるかもしれないなあ、
ふとそんなことを思ったりもした3時半。