kiritterのブログ

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モバツイ開発者の語る問題意識と情熱 - 書籍紹介 - 100万人から教わったウェブサービスの極意

2009年にアカウントを作りながらも、当時どなたかが言っていたように「月面に降りた感じ」に直面して1年近く放置し、2010年に、あっこれは新しいインフラだぞと認識し直し、使用し始めた、Twitter

そのTwitterに、黎明期から着目し、日本語でも不自由なく使えるように、そしてケータイからも使えるように、と出発したWebサービス、「モバツイ」開発者の著書。
(※忘年会議「2009年の究極のウェブ」ランキング1位「モバツイ」)

 

『100万人から教わったウェブサービスの極意 - 「モバツイ」開発1268日の知恵と視点』
(藤川真一、技術評論社、2012)

100万人から教わったウェブサービスの極意 ?「モバツイ」開発1268日の知恵と視点

100万人から教わったウェブサービスの極意 ?「モバツイ」開発1268日の知恵と視点

 

内容を大きく分けると、以下の2本柱で相互補完的に話が展開されていく形。

  1. 著者の今に至るまでの経緯や開発・運用の具体的な舞台裏的なもろもろ
  2. モバイルやソーシャルメディアについて、そしてサービス提供者として関わることについての考察

技術評論社からの出版ということもあり、個人的には、技術側面強めで前者の内容のみが書かれていることを期待して購入しましたが、知っている人から見れば逆に、藤川氏の考える後者の内容こそ知りたい、というバランスもあるのだと思いますし、私も確かに知りたい内容に違いは無いので、想定とはちょっとずれながらも、とても有難く読ませて頂いた次第です。

 

興味深い点多々ありますが、本筋に関係なく、強引にピンポイントで3点ピックアップ。

■1点目

仕様通りにプログラムを作って納品して終わりではなく、

一つのネットサービスの成長に責任をもち、

サービスを改善、改良しながら、徐々にユーザーを増やしていく。

その経験の結果として、顧客との信頼関係やユーザー数というストックを作り、

そこから売上を上げることに自分の時間を費やす。

極端に単純化して述べますが、いわゆるSI企業内でシステム開発している人から見ると、人によっては、結構これはひとつのパラダイムシフトな話だと思う次第。

「WHATはお客様が持っている。自分たちはHOWを考える。」
もうちょっと言い方を変えると、
「ビジネスとしてのWHAT/HOWはお客様が持っている。
 それが要件として降りてきて、自分たちはシステムとしてのWHAT/HOWを考える。」
というイメージにより。

ビジネスとして成り立たせることはホントに難しいことだ!!

 

■2点目

どうしても売上が上がる仕組みで頭を痛めることになります。

多くのケースで、マネタイズの仕組みを構築できずに失敗しています。

ウェブ2.0を追求しても儲からないというのが、ネット関係者の共通認識になっています。

この点、モバツイの実情をもっと知りたかったなあという思い。。

ともかく、Web2.0の動きは社会から見て有益には違いないのに、マネタイズがうまくいかずに廃れるというのは、寂しい話。ホントに有益ならマネタイズできるでしょう、というご意見もあるかとは思いますが、一方で、これだけ社会にインパクトを与えているTwitter自体も、まだまだあまりうまくいっていないみたいですし・・・。

そうなると、

必ずしもオープンではなくなっているように思えます。

というWebの姿になっていくのだろうか・・・。

先日の、『なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門』でも話の挙がっていた、「コンテンツ創作だけで食っていこうとするのはもう無理」という話にもつながることかと。

Twitterなら、プレミアム会員的なプランも可能なんじゃないだろうか。例えば、1000人以上フォローしたいなら、とか。無料のままでも十分使えるけど、もっと使いたい人のために、という方向性なら、それほどネガティブなインパクトはないような。その中から、ツイートされた件数でサードパーティにも配分されるとか。そんな簡単な話ではないか。。(^_^;)

とりあえず、お金に関する舞台裏として、
ユーザー数の増加に伴い、会社員を続けながら負荷問題の対応に追われる日々に追われ、同時に、ユーザーの顔も見えなくなっていき、閉塞感を感じていたという話や、
クラウド利用が視野に入るが、従量課金性であることから、「何らかのかたちで採算がとれないと継続的にサービスを提供していくことは不可能」だという決断の分岐点に差し掛かった話など載っており、それらの状況がリアルに想像できて、胃が痛くなりそうでした。。
好きだという思いと、覚悟が必要だ。

 

■3点目

Twitterの奇跡、とくに日本人に向けて、ということが分析されています。
そうそうと思いつつ、日本で生まれなかったのが不思議なくらいのサービスだよなあとか思ったりしていました。

もしかしたら、アイデア自体は、日本のどなたかも類似のモノを持っていたのかもしれません。
そう思うと、そういうアイデアを持続可能にしやすい土壌の問題なのだろうか??

そういえば、Facebookの本でも、初期は両親からの援助で数百万使って、サーバーを増やしていたという話があった。資金的な話は、なかなか難しい話だなあ・・・。

 

何だか、どれも資金的な話ばかりになって、あまりこの本の本筋とは関係ないところをピックアップした形で大変恐縮ですが・・・、いわゆる「中の人」、それも「中心にいる人」から、これだけのことをまとまってお聞きできる機会もそうそうないので、非常にためになる本でした。