先日、目的の本をゲットしようと覗いた書店で目に留まり、妙に気になって一緒に購入。
それなりにでも事情に通じているわけでもない自分が、こんな本を紹介するのも気が引けますが、それを言い始めたら何も紹介できない。。(^_^;) これは自分が読んだ本のログなのだ、という開き直り精神で今後も記したい。
『グローバル恐慌の真相』
(中野剛志、柴山桂太、集英社、2011)
- 作者: 中野剛志,柴山桂太
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/12/16
- メディア: 新書
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「はじめに」や一章の最初にあるように、
今、世界が経験しているのは、単なる経済現象としての不景気にとどまらず、政治や社会あるいは文化そして思想などにまで及ぶ、複合的で全般的な危機だと私は思います。
いわゆる経済学には到底おさまり切らない議論を展開していきます。
そんなアプローチが、市井の人間なりの感触で、どうも政治なり経済なり社会の仕組みなりがいろいろとうまくいっていない感があるよなあ等と曖昧ながら思っているような私には何だかしっくりきたというのが購入の動機。
ひとまず、この本単体で読んだところの納得感は強かったな、という思い。「世間で言われていることとは大きく異なる議論を展開していく」と前置きされていたが、自分の知らなさゆえか、別に突拍子のない話が続いたとも思わず。
ともかく、歴史を紐解きつつその文脈でいろいろと説明するというスタイルが、テーマに通じていない私のような者には、とても読み易くてためになった。
ちなみに、この本単体で~と変な前置きをつけたのは、その説明されている背景をきちんと自分が知らないから・・・。それは本当か? 本当だとしても別の影響もあったのでは? そんなことを思い浮かべられないから。
極端な話、「グローバル化がもたらすデフレ圧力をどう緩和するか」というような一言について、この本の文脈上では、そのままふむふむと読めるけど、実際のところ、デフレ圧力をもたらしていることは本当か? 本当だとして、それを緩和すると、今は抑えられている他の何かが表面化してきて云々、そういう話が体感的にすぐ出てこないという話。
というわけで、この本で横断していくテーマは幅広く、私には何ら言及できず(!)、ちょっとした雰囲気しか伝えられませんが、私にとっては、現在の世界を見る、ひとつの視座を得られて非常に有益だったなという思いです。
ちなみに、ラストで「もっと具体的な処方箋をと思っている読者もいるかもしれません」とわざわざ書かれているように、そういうのではなくて、今に至る因果関係を分析した内容です。
なお、著者たちは、TPP参加反対陣営の方ということで、次は賛成陣営の論を読むと、一層有益かと思っています。とはいえ、Amazonを覗くと賛成派の本、ほとんど見かけませんが・・・。
ちょっとTPPに関係して、乱暴ながらピンポイントで一部引用。
アメリカは、自分たちがどれだけ保護主義的な政策で成長してきたかについては口を閉ざして、戦後自分たちが圧倒的にトップになった瞬間に、自分たちの製品を世界で売る必要から、各国の関税が邪魔だということで、自由貿易のイデオロギーを強力に推進するようになる。
(福沢諭吉の著作を幾つか読むと、)イギリスは自分の利益のために自由貿易と言い、アメリカは自分の利益のために保護主義を言い、みんな国益のため、ナショナリスティックな理由で言っているにすぎないのだと、彼はちゃんと書いているんです。
結局、国内の利益団体を追い出せば、今度は海外の利益団体がやってくるという話になってくるわけです
いやはや、「システム思考」というのがありますが、この本で扱っているようなテーマこそ、システム思考を活かすべき究極のテーマだなあと。
過去Aだったところが、発展に伴って今のBになってきたのだ、という言説があるが、いやいや、元々Xという状態があったので、それを何とかしようとAにしたのだ。そういう経緯を無視して、Bにしてきたから最近おかしいのだ。この本はそんな感じで話が展開されていきます。
なかなか人間というもの、端的な例では合成の誤謬とかあるように、全体最適系の、タイムラグもあるような物事の推移については、なかなか考えが及ばないというか、総体として行動できないというか、なので、いまだ人類は壮大な実験の途中なのだ、という思い。そう、実験。とても完成された世界ではない。実験だから大失敗する可能性もそりゃある・・・。一人ひとりの人生の時間は有限であり、その前提の世界で生きる以外に生きる道はない。(などと自分に言い聞かせる。。)
この本で展開される非常に厳しい現状認識の論に、怖ろしい思いをしつつ、自分も物事をより良くする力になりたい、そういう読後感。