kiritterのブログ

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仕事をみじめなものにする根本的な3つの要因 - 書籍紹介 - なぜCEOの転進先が小さなレストランだったのか

1つは紹介記事を書いておきたい、そう思って、たまたま今日読み終えた本ということで、最初の書籍紹介はこの本に。

『なぜCEOの転進先が小さなレストランだったのか』(パトリック・レンシオーニ、NTT出版、2011年)

なぜCEOの転進先が小さなレストランだったのか ―マネジメントを極めた男の物語

なぜCEOの転進先が小さなレストランだったのか ―マネジメントを極めた男の物語

  • 作者: パトリック・レンシオーニ,矢羽野薫
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: 単行本
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 この本はもう、人間の話。テクノロジーでもビジネスでもなくて。

この本との出会いは、いつもの如く偶然で、先日、『ヴィクトリア朝時代のインターネット』という本を購入し、とても興味深くおもしろく読んだのだが、よくあるように、既刊一覧の冊子が挟み込まれており、何だか気が向いたのでそれにも目を通した。その中に、この本が載っていて、妙に心に引っ掛かったのだった。

 この本では、仕事をみじめなものにする根本的な3つの要因として、以下を挙げている。

  1. 無評価
    • 評価の伴わない仕事はみじめで悲しい気持ちになるものだ
    • フットボールの試合をしていて、スコアがわからないようなもの
  2. 無関心
    • 自分には関係ないと思うこと
    • 自分のやっていることが、誰かの人生に影響を与えると実感できないこと
  3. 匿名性
    • 自分がどんな人間なのか同僚は誰も知らなくて、自分のことを誰も気にかけていなかったら、仕事に行くのが楽しいと思えるはずがない
    • これは決して「感傷的」な話ではない

どれも非常にしっくりきた。どれも身に覚えがあるし、内容的には同じようなことに思い至っていた。曖昧模糊としたそれらが練りに練り上げられて3つに集約され、キミが思っていたのは要するにコレでしょ?と目の前に提示された感じ。

 そして、この本、小説仕立てなのだ。なぜ上記の3要因によってみじめな気持ちになるのか、それをどう解決していくのか、そうするとどういう反応が起きていくのか、主人公夫婦間の会話でのやり取り含めて、とても丁寧に説明されていると思う。(だから、買った。上記の3要因が列挙されているだけの本だったら、きっと買わなかった。まあ確かにオレもそう思っていました、とだけ思って。。(^_^;))

さて、この本に好感を抱くのは、以下のようなやり取りがきちんと描写されてあるから。

  • 主人公に真意を問われた従業員が、「実は、(こんなことは)くだらないと思っている」と伝える
  • 主人公から引き継ぎを受けようとしている共同オーナーが、「そういうくだらない話は、オレにはやめてくれ」と返す

そう、必ずこの類の出来事が起こる。身に覚えあるし、この本の中でも、ひとつの大きな壁として説明されている。この壁は、越えるのが非常に難しい。ボトムアップでは難しいテーマのひとつじゃないかと思う。

そうそう、先日、RTされてきたツイートで思い出した、『V字回復の経営』(三枝 匡、日本経済新聞社、2006年)でも、以下のような症状が挙げられていた。

  • 激しい議論は大人げないと思われている

ひとまず、この話はここではここでストップ。。

というわけで、この本、類似の本もたくさんあると思うし、それらと比較してどうこうは何も言えないけれど、私は今読んでとても良かった。とはいえ、トップダウンできる地位に立たないと、影響力の行使の点で(査定的なこととか)なかなか難しいよ・・・という疑問はやはり残るままなのだが。。それでも、整理されたカタチで再確認できて良かった。

うーむ、紹介記事として、これだ!というカタチで書けていない感じでちょっとアレですが、ひとまずの1本目ということで、以上です。

 

<翌朝追記>

あらすじ紹介とこの本のテンション紹介を兼ねて、著者の熱い言葉を追記する。熱い言葉が好きだ。

ある企業の再建に成功した主人公だったが、大手の市場参入を機に、買収されることに合意し、リタイアする。そして、懸念し、訴えていたにも関わらず、やはり買収後にその古巣がバラバラになっていくのを見聞きする。我慢できずに、買収をまとめた投資銀行家の旧友に訴える。しかし、「きみの言うような感情的な部分は、収益に関係ないのだ」と繰り返し諭され、主人公が吠える。

  • きみが理解していないだけだろう? 僕たちが成功したのは、僕たちが築いた文化があったからだ。特許?製品?ブランド? いいか、そういうたぐいのものは、社員が自分たちの仕事を愛したから生まれたものだ。

その主張の正しさを証明するため、まったくうまくいっているようには見えない近所の小さなレストランの共同オーナーとなり、そこでの実践の中で、これまで無意識にやっていたことの明文化含めて、上述の3要素を見出していく、そんなテンションのストーリー。

私はこの著者の正直さに好感を抱く。「私はそう思っている」そんな言い回しがしばしば出る。「この話こそ真実なのだ!だから聞けー!」じゃなく、「価値があると思っている。少なくとも私はそう信じている。」という姿勢。これは、私自身が過去そのようにしようと思った心の持ちようと同じだ。「真か偽か、究極のところはもうわからない。その上で、オレはこちらを信じることに『決めた』 そういうことにして生きていこう。」そんな感じ。(まあ、人によっては、こういう話も、くだらないものになると思うけど。。)

というわけで、これさえやればすべてうまくいくというような唯一の正解が書いてあるわけじゃないけど、人生をより良くしていきたいと願う人にとっては、ひとつの価値ある話が載っているのではと思う。